【レトロゲームで例えるグルメレビュー】渋谷 亜寿加の排骨担々麺
はじめに
――そんな表現では味がわからないよ!
グルメのレビューを見てそんな風に思った事はないだろうか?
もしくはワインの説明に「熟成したカシスの様な」と書かれていて、熟成したカシス?食ったことねぇし!というかカシスって何!?果実?!被子植物!?裸子植物?知らないけどカシスウーロンの味みたいなもんですかね!?はぁ遠からず近からずですか、じゃあ僕、白木屋でうっすいカシスウーロン飲みますわ!それがお似合いですよね!そうですよね!ごめんなさい!ごめんなさいね!慣れないワインショップなんて来てごめんさいね!
と口には出さず心に留めつつ、デイリーヤマザキで鬼ころし(180ml)を買ってチューチュー吸いながら帰り道を歩いていたら今宵の月がやけにきれいなのにふと気づき、なぜか涙があふれて止まらなくなってしまった経験がある方も大変に多い事だろう。
なぜこんな事が起きてしまうのか。
それはみんなの共通認識がない言葉で味を例えてしまっているからである。
まさに「熟成したカシス」なんてものは少なくとも日本人においては全員が共通で同じ様な味が思い浮かぶフレーズではないのだ。
かといって「◯◯の様な」という例えを使わない制限を設けてしまうと、味というものは到底表現しきれない。おいしい、甘い、辛い、しょっぱい・・・これらの味を表す形容詞に「ほんのりと」「すこぶる」「適度に」という修飾語をつけてなんとか表現するしかないが、実際やってみようとすると意外と難しい。
味の例えにおいて頻出する「実家で出てきそうな」「刑務所の飯か!」「このバームクーヘン親の仇みたいに甘いよ」は全て使えなくなってしまう。
もし彦摩呂に例えを禁止してしまった日には、伝家の宝刀「宝石箱やぁ〜」が繰り出せずに黙々と食事をする映像が全国のお茶の間に流されることになるだろう。
ではどうすれば良いのか。みんなの共通認識がある可能性が高い言葉で例えれば良いのだ。みんなの共通認識がある事柄と言えばいうまでもない。レトロゲームだ。この世の確信という確信をポケットに詰め込み夏の星座にぶら下がりながらブレーキいっぱい握りしめて瞳そらさずに言おう。レトロゲームである。
ようやく本題だ。今回は私が愛する渋谷「亜寿加」の排骨担々麺をレトロゲームに例えながら紹介する。
場所
渋谷と聞くとスクランブル交差点や109あたりをイメージする方が多いだろうが、今回紹介するお店はそちらとは逆、西口から出て左手の歩道橋を渡ってすぐのところにある。
若者達の喧騒で溢れる109側とはうって変わり、こちら側は落ち着いた雰囲気ながらも実力派のお店が多い。
そうまさに、ポップなキャラで有名なワギャンランドの裏面が、玄人好みの歯ごたえあるステージ構成になっている様と同じである。
同じなのである。否定しようが無い。同じである。
外観
お店の正面は赤い柱で構成されているので恐らく近くまで行けば目につくだろう。店内に入ると妙齢のマダムのいらっしゃいませの声が聞こえるはずだ。そして席が空いていればそこへ案内され、満席であれば入って右サイドへ並ぶよう促される。
メニュー選択
さぁ、店内に入ったら注文だ、数多あるメニューに戸惑うかもしれないがこれは罠である。目を閉じて「排骨坦々(パイク―タンタン)」と頼もう。さらに個人的にはかためを大いに推奨するので良ければ「排骨坦々のかため」と頼んでいただきたい。
するとマダムから厨房に驚きのメニュー伝達が発生する。
「あったかいの。めんかたー」
そう、あったかいの=排骨坦々なのである。なんという略称であろうか。
別にみそらーめんなど他のメニューが冷たい訳ではない。しかしだ、来店する多くの人が排骨坦々を頼むために、いつしか"あったかいの"で略す様になったのだろう。
もう伝わったと思うがあえて例えよう。これはつまり「燃えろプロ野球」をフルネームで呼ばずに「燃えプロ」と呼ぶのと同じである。
「燃えプロ」の可能性のあるソフトとして「燃えろプロテニス」「燃えろプロサッカー」もある。しかし「燃えプロ」が差すのはほぼ100%「燃えろプロ野球」なのである。そう、これは排骨担々麺があったかいのと呼ばれる原理と同じだ。同じなんだ!
もしかしたら何も例えられていないのではないだろうか。こんなテーマで記事を書き進めてしまい、既に多大な後悔の波に飲み込まれているがここまで書いてしまったのだからもったいない。頑張って進めよう。
排骨担々麺登場
亜寿加さんはとにかく待たせない、注文から5分せずに麺が出てくるだろう。
ようやく排骨担々麺をご覧いただく事ができて一安心である。
まずは衣がスープを吸ってしまうまでにお肉を一口いってほしい。
そのサクサク感には影の伝説で飛び回りながら忍者を斬っていく様な爽快感がある。
そして麵だ、スープから引き出した歯切れの良い細麵には、しょうゆベースであっさりながらキリリと辛いスープが絡む。
ぜひスターソルジャーの冒頭に登場するスピーディなスルメ型の敵、メルスを小気味良いビームで破壊してく様にすすりこんで欲しい。
もはや自分でも例えなのか何なのかわからなくなっているが、やり抜く事が大事だとどこかの主体性が無い先生とかが言っている気がするので私はやり抜く。
亜寿加とはしご
ここまで見て、ラーメン通の方は名店「支那麺 はしご」(銀座)に似た印象を受けているかもしれない。かくいう私もそう思った一人なのだが、この二店の坦々麵は似ているようで実は結構違うのである。
そう、言うなればロードファイターとジッピーレースの関係と同じだ。双方とも同じトップビューのレースゲームでありながら、ロードファイターだけにスリップから回復する要素があり、ジッピーレースだけにリアビューの場面がある様に、両者には両者の良い点があるのである。
決してこの2店を甲乙、マリオルイージ、おすぎピーコ、順一郎光一郎つける事はできない。
肉ごはんチャンス
また、このお店の麵には無料で小ごはんが付けられる。麵を食べ進めている間に、肉にスープが染み込んできたら肉ごはんチャンスだ!頭の中にキャッスルクエストで絵札が出た時の音を響かせよう!
(響かせた人カウンター [0000003] ※随時更新中)
肉をこうこうこうしてご飯に乗せるとこうなる。
どうしよう・・・。
なんておいしそうな感じが伝わらない写真だろうか。
いや、だからこそ例えよう。このライスオンザ汁吸い排骨肉状態は、ダウンタウン熱血行進曲の勝ち抜き格闘で棒を持ったごだいと同じぐらいに最強である。どうだろうか、これは伝わったのではないだろうか!?
しかし勝ち抜き格闘程の心配をする事はない、なぜなら坦々麵が出されると同時に、肉を場外に投げ捨ててくるような輩は存在しないのだから。
旨みの「髄」
そして、この担々麵の重要な要素として「髄」がある。牛のうまみが詰まった隋をスープの端に浮かべているのだ。ここだけをすくい取り濃厚な味を楽しむもよし、半分ぐらい食べ進めたところで混ぜてスープに変化をつけるもよし。自由に楽しむのが良い。
この自由度は4人のキャラを好きに切り替えながら進める事ができる貝獣物語の自由度に匹敵するレベルである。
常連特典
そして最後に忘れてはいけない要素がある。常連化である。
亜寿加さんには、いつも同じ注文かつ、マダムに顔を覚えられるという二つのハードルを突破すると大きなごほうびがある。
それは、席に着いた瞬間に「いつもの?」と聞いてもらえるという事である。というかまぁまぁ行ってるつもりの私も聞かれた事はないのでどのくらい行けば常連認定されるかは未知数である。
いやしかし、だからこそ、きっと「いつもの?」と聞いてもらえたその瞬間の喜びは、ときめきメモリアルにおいて藤崎さんにはじめてあだ名で呼んでもらえた瞬間に匹敵する事であろう。
ただし、マダムが頬を赤らめる事は無いので、そこまで期待してはいけない。
レトロゲームで例えてはいけない
さぁ、今回の結論は既に明白である。
食べ物の味はレトロゲームでは例えられない。
ごきげんよう!