真説
「豪華客船乗ってたのに...腹が減ってるのなんでだろぅ...」 「なんでだろぅ...」 現実逃避する様に歌ったいつものフレーズは客席に届かぬまま消えていく。 僕はテツ。テツandトモの赤い方と言えばわかるだろうか。 この上なくおいしい営業に来たはずだった…
前話 ゴゴーという空気を含んだ低い音と金属が擦れる高い音、そして小刻みに揺れる部屋。 朝か。僕はいつもの通り、目を閉じたままこのノイズをやりすごす。 高架下のアパートに住む僕の毎日は、始発列車による目覚ましから始まる。 ここから出勤の時間まで…
「ねぇ、ドンキーの事なんだけど。ちゃんと考えてくれてるわよね?」 ドレッサーに座ったレディが鏡越しにそう言った。 こんな大雨の日にもよく通る彼女の声には、ピアスが上手く通らない以外の怒気も含まれている。 考えるも何も答えは決まっている。しかし…